499人が本棚に入れています
本棚に追加
実晴にとってはお見合いを受けてくれただけでもありがたいのに、ニアは実晴のデメリットを全て分かったうえで、好意的に接してくれている。
ニアの言葉1つ1つに、実晴も救われた。
「実晴はたくさん辛い思いをしてきたんでしょう。だから……これからは俺が守るから」
今回のお見合いが上手くいくものではないと覚悟していた。
またいつものようにオメガに生まれてしまった運命を、罵られるのだと思っていた。
ぴんと張りつめていた糸が弛んで、実晴は大粒の涙をぼろぼろと溢した。
「本当に……僕なんかでいいんですか?」
「俺は実晴がいいんだよ」
抑制剤のおかげでクリアになった脳内で、自分を選んでくれたニアとのこれからのことを考える。
不幸だった今までの実晴の人生を、ニアは埋め尽くしてくれるように包み込んでくれた。
……ーーーー。
未知のウイルスによるパンデミックーー有効な治療法の確立しないウイルス感染によって、世界の人口は半減した。
ネコ科が感染しても重篤化しない特徴のウイルスは、現在もその生態のほとんどが謎のままだ。
パンデミックの終息宣言から50年後、失った人口を取り戻すために、生殖に特化した第2の性が誕生し、人類は急速に繁栄していった。
最初のコメントを投稿しよう!