ニアの願いごと

そして、オメガバースと同時期に獣人という存在も確認され、人類は多様化していく。

獣人化の起源についてはいまだに解明されておらず、『未知のウイルスへの抵抗力を獲得するために、免疫を持つネコ科が進化した姿』という説が、学者達の間で支持されている。

オメガの数よりは多いけれど、アルファの数よりは少ない獣人。特に能力の高いアルファと、勘が鋭く身体能力に恵まれている獣人とのハイスペックは、地位も需要も高かった。

『獣人は、ウイルスに対抗するために人間に、ネコ科の遺伝子を挿入して人為的につくられた』という子供の頃に流行った都市伝説をふと思い出して、実晴は小さく笑った。

それから話はとんとん拍子に決まっていき、ニアと同棲を始めることになった。

生涯嫁も取らず子供もつくらない、と譲らなかったニアが実晴の写真を見て心変わりしたとき、宝条家の両親や祖父母は泣いて喜んだという。

悩みの種であった、前のアルファとのいざこざも借金も、宝条家の力で全て消えてなくなってしまった。

ーー早く子供をつくれってことなのかな……？

両親同士が顔合わせをした日、実晴は宝条家の人には特に何も聞かれなかった。

欲しいのはニアと血縁関係のある子供なのだ。