高津万里

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瞬平(しゅんぺい)薫平(くんぺい)」 「ああーいっ!!」 「あいっ!!」 「あははっ。いいお返事」  二人が二歳になって、我が家は賑やかな毎日。  早くも…二階堂の人間としての適性検査を受けさせた。  今でも紅のことを煙たがる輩に、俺と紅の子供達がどんなに優秀であるかを知らしめるためでもある。  …変な所でムキになってるな…と自分でも思ったが、紅を…子供達を守るために、二階堂の人間として生きる事は…必要だ。  今も記憶が戻らないまま。  それでも高い能力の持ち主である紅は、時折道場で稽古をし、俺と一緒に現場にも出る。  きっと、いつかは認められるはずだ。  紅も…二階堂に欠かせない人間だ、と。 「万里くん、これ、誰から?」  紅が、大きな箱を抱えてやってきた。 「何」 「分かんない。門前にあったって」 「怪しい物じゃないのか?」  慌てて紅の手から取ろうとすると。 「舞さんが検査したけど大丈夫って」 「…そうか」  箱の上には、俺と紅の名前。  そして…小さく青色と緑色のペイント。 「……」  無言で箱を開けると、中から子供服と真っ赤な花束。 「うわあ、すごい」  花束を抱えて喜ぶ紅。  俺は、窓から外を見渡す。 「……紅」 「ん?」 「散歩に行かないか?」 「いいわね」  俺は瞬平と薫平を抱えて外に出る。 「天気いいー」  公園につくと、俺は瞬平と薫平をおろした。 「ね、さっきのプレゼント、誰か分かった?」 「ああ」 「あなたの知り合いなのね?」 「…まあね」  紅は、俺の腕にすがると。 「…最近ね」 「うん」 「記憶が戻らなかったらどうしようって…思わなくなった」  小さく笑った。  前は、頻繁に記憶を戻したいって言ってたっけな… 「幸せなんだもん。過去のことは、いいかな…なんて」 「いいさ」  前方のベンチに、目深に帽子をかぶった二人の金髪が座っている。 「瞬平(しゅんぺい)薫平(くんぺい)、転ぶなよ」  俺が大きな声で言うと、二人は両手を挙げて笑った。 「あたしも、遊んでこよ」  紅が、二人に続く。  俺は、静かにその光景を見つめる。 「あーいっ」  薫平が、落葉をベンチの一人に差しだした。 「……」 「こら、薫平。ごめんなさい」 「……いえ」  静かに時間が戻る。 「双子ですか?」 「ええ」 「歳は?」 「二歳です」 「……名前は?」 「こっちが瞬平、こっちが薫平です」 「…いい名前ですね。ご主人がつけられたんですか?」  ふいにそんなことを言われて、紅はキョトンとする。 「いいえ、あたしがつけました」  紅がそう言うと、二人は瞬平と薫平を見つめて…頭を撫でた。 「…いい子ですね…」 「どうでしょう。毎日走り回って転んで、ケガばっかり…あ、瞬平っ」  かけだした瞬平を追って、紅が立ち上がった。  俺は、ベンチのそばにいる薫平に近付く。 「…プレゼント、ありがとう」  小さくつぶやくと、ベンチの二人は少しだけ顔をあげて。 「こちらこそ…ありがとう…」  立ち上がった。  紅は、二人が自分の兄弟じゃないことを知っていたのだろう。  それを、二人は今、知ったことになる。  ゆっくり歩き始めた二人は、片方が足をひいている。 「知り合い?」 「いや…」 「なんだか、優しい目をしてたわ」 「…そうだな」  紅の肩に、優しく時間が降る。  きっと、彼たちはいつまでも、紅のことを想い続けてくれるだろう。  紅が、彼たちのことを覚えていないとわかっていても…。  7th 完
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