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「あ、いや。俺、寝てた?」 (ええ。わたしの机でがっつりと)  そう言いたいのをぐっと堪え、透子は頷く。  渚馬が顔をあげると机の上にきらりと光る液体が。  思わず顔を引きつらせた透子に気づき、渚馬は机に目を向けると、慌てて自分の腕で拭おうとした。  結果、机の上に塗り広げただけに終わり、透子の表情はますます強張る。   「ご、ごめんね! いや、これ、おっかしいな。よだれじゃないよ!」  よだれじゃなかったらなんなんだ。と思いつつも、透子は口に出さない。  プリーツスカートのポケットからティッシュを取り出すと、無言のまま渚馬に手渡す。  自分でふき取るのは嫌だった。  渚馬も察したのか、素直に受け取ると自分の体から排出された液体をふき取る。 「えーーっと、その、ごめん!」  ぐしゃぐしゃに丸めたティッシュの塊をズボンのポケットに押し込む渚馬を見ていた透子は、首を横に振った。  今度除菌ジェルを持ってこよう、と内心思いつつ。 「起きたなら良かった。電気消しておくから、大和君も帰った方がいいよ」  さっさと立ち去りたい様子を隠そうともせず、自分から距離をとっていく透子の背中に、 「ちょっと待ったぁ!」 と渚馬が呼び止める。 (あ、これ止まったらダメな気がする)  そう感じた透子は、気づかないふりをして教室を出ていこうとした。  突如、背後で机や椅子のぶつかる音が聞こえる。  ゾクッとするような寒気を感じ、立ち止まった透子の肩を渚馬ががしっと掴んだ。 「俺、真崎さんを待ってたんだって! ちょっと話聞いてよ!」
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