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「じゃあこれで失礼します」 「ご、ごめん! 本当もう、真崎さんにしか頼めない事なんだって! 頼むよ!」  自分にしか頼めない事と言われ、透子は足を止める。  そう言われては気にならないわけがない。  透子は子犬のような表情で自分を見つめるハリネズミを、あざとい顔ってこういう感じだろうか、と思いながら見上げた。 「簡潔にお願いします」  一気に笑顔になった渚馬は、ズボンのポケットからぐしゃぐしゃになった赤い紙を取り出す。   「え?」  それは形こそなんだかわからないが、透子が普段からよく見る物、折り紙であった。 「真崎さん、折り紙愛好会の会長だったよね? 頼む、俺に鶴の折り方教えてくんない?」 「折り紙愛好会じゃなく、折り紙同好会です」  咄嗟に訂正してしまったが、透子はかなり驚いていた。  会長とは名ばかりで、たった一人で活動している透子。  その認知度の低さは、まさに折り紙付きだというのに。  なぜ渚馬が知っていたのか。   「あ、ごめん。えっと、その、駄目かな?」 「なんで折り鶴を折りたいんですか?」  渚馬は一瞬きょとんとした顔をしたが、透子が話を聞く姿勢を見せた事に気づき、笑顔になった。  ふわっとした人好きのされる表情は、透子には少し眩しい。  思わず目を逸らしたが、渚馬は気にする事なく、嬉しそうに口を開いた。 「俺さ、保育園に弟いんの。二歳の」
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