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一言でいえば、渚馬はとても覚えの悪い生徒だった。
恐らく、透子が通っている保育園の園児よりも。
「折り紙の端と端、そんなにずれがあると後で形が整わないってば」
「え? これぐらい平気じゃない?」
「平気じゃないから言ってるの。揃えるだけよ? もう一回やり直し」
「ちょ……三角の形つくるのに、もう十五分ぐらいたってるんだけど」
「やり直し」
にこりとも微笑まない透子に、渚馬はしゅんとした表情を浮かべながらくしゃくしゃになった折り紙を広げた。
角と角を対角線上に合わせ、二等辺三角形の形をつくる。
ぷるぷると震える手のせいか、どうしてもぴったりと揃わない。
「これさ、ひょっとして定規とかいる?」
「……いらない」
一時間という条件を出したが、教える以上は最後まで付き合うつもりだった。
折り方をただ教えるだけじゃなく、綺麗な形でつくれるように。
でも、三角折りの時点で悪戦苦闘している渚馬を見ていると、いじめているような気持になる。
折り紙の端と端を合わせられない人は、幼児期に折り紙を折った経験が少ないという。
透子は自分の折り紙ケースから水色の折り紙を取り出すと、瞬く間に風船と呼ばれる四角い箱のような形に織り上げた。
一枚の紙が立体になっていく様子に、渚馬は釘付けになる。
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