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「暑い。想像以上に暑い。」
水筒の水がもうなくなると言うのに身体の水分は止まることなく汗となり溢れてくる。
見渡しても砂、砂、砂。
青い空と砂丘。
今にも死にそうになりながら、藤堂ルナは一人砂漠を歩いていた。
溜まっていた有給を使い一人旅に選んだ先は、全く知られていない中東の小さな国。この近辺にはいくつかの謎が多い国が点在している。
交通の便が非常に悪いこともあり訪れる外国人はほぼいないが、ルナは小さい頃に考古学者だった父に連れられてここに一年ほど滞在したことがあった。その時の記憶はほとんどない。だが美しい砂漠の景色を忘れたことはない。
そしてエメラルドグリーンの宝石のような瞳の美しい少年をーー
「それにしても想像以上に辛い。」
途中まで車で送ってもらい「あと少しでホテルに着く」という言葉を信じて歩いて来たが、それらしき建物が全然見えない。
砂粒が細かくて足を取られる。淡いオレンジ色の砂漠が果てなく続いていて気が遠くなりそうだった。
「わ!」
目眩がして意識が朦朧としてきたルナは、その場で膝をつき前方に倒れ込んでしまった。
「きっと私ここで死ぬんだなー。でも誰にも気付かれずに終われるならその方がいいか。」
(脇役なら脇役らしく死んでやるわよ。)
「私なんて.....どうなったっていいだから......」
閉じた目から涙が一粒零れ落ちる。そしてそれは一瞬のうちに砂に吸い込まれた。
ーーーその時。
倒れたルナに大きな影がかかった。
「ん?」
うっすらと目を開けると、照りつける太陽を背中にしょってマントをなびかせながらラクダから降りてきた人物がいた。逆光で顔は見えない。
「幻覚...? それとも...もう死んだの?」
「............。」
「あぁ良かった。生まれ変わったら今度こそ私だけを愛してくれる人と出逢わせてよ神様..........おね...が...い...」
ルナはそのまま意識を失ったーーー。
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