物語のはじまりは流れ星の下で

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   甘く優しいミステリアスな香りがする。まだ頭がハッキリしない中、ルナはその匂いに誘われるようにゆっくりと目を開けた。 「ん......あれ?.........ここどこ?」 ぐるっと視線をひと回りさせる。 横たわっているのは天蓋付きの豪華なベッド。赤く透けたベールには金色の刺繍のアラベスク模様が施され、とてもエキゾチックだ。 室内はキャンドルの光でゆらゆらとオレンジ色に照らされ、白い壁の至る所に散りばめられた黄金の装飾が反射してキラキラ輝いている。 「............ん、天国?」 ルナは首を傾げた。天国とはもっとシンプルな場所だと思っていたのに、まるでアラブの王宮にでも来たように煌びやかでゴージャスだ。 「いやどこ?」 カーテンが風でふわりと揺れている。窓の外を見ると、美しく燃えるような夕焼けが砂漠に沈むところだった。 ルナはベッドから足を下ろしもっと近くで見ようと窓枠に手をついた。 「わぁ..........綺麗......」 言葉もつまるほどの神秘的な景色に思わず見惚れてしまう。 ーーすると。 「うむ。これは絶景だな。」 「?!」 突如後ろから声がしてルナは振り返った。 「だ、だれ?!」 入り口で腕を組んで立っていたのは中東の男性が着る白いカンドゥーラ姿の男。 男は窓側に立つルナに近寄ってきた。目の前まで来てピタッと足を止めた男の顔を見てルナは瞠目する。 「え?」 褐色の肌とエメラルドグリーンの美しい瞳。端正な顔は今まで見たことがないほど。 (射るような鋭い目つきはまるで.........) 「悪魔?」 男はピクっと片眉を動かすと、ルナの顎に人差し指を当てクイっと上に向けた。 「この家の主人に向かって失礼なやつだ。」 そう言うや否や男はルナに口づけをした。
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