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どれくらい歩いただろうか。
終わりが全く見えない暗闇。恐怖心から叫びたくなったが、からからに乾ききった喉からは声もうまく出ない。
しかし足を止めることはできない。今さら引き返すこともできない。
気がおかしくなりそうだった。
もうだめだ、俺は狂ってしまう。
その瞬間、落とし穴のようなところで足を踏み外し、真っ逆さまに落ちていった。
少しずつ目を開けると、まばゆい光が差し込んでくる。。
目の前には心配そうな顔が3つ、こちらを覗き込んでいる。
「目が覚めた!ママよママ、わかる?」
皆安堵した顔で、自分の頭を撫でたり、涙ぐんでいた。
ああそうか、母だ。これは父か。こっちは姉。
あんなに疎遠になっていた人たちも、自分の危機の時は駆けつけてくれたのだ。人間、捨てたもんじゃないな。
まだぼうっとした頭でいると、先生と呼ばれた白衣の人が俺の顔をのぞき込んだ。
「ああ、意識を取り戻したようでよかった。あと一日入院して明日には退院できますよ」
皆ぺこぺこと頭を下げ、俺に手を振りながら病室を後にした。
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