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汗が冷えて妙にチクチクする背中で彼の声を、その時はじめて聞いた。とはいえそれは野太い咳ばらいのようなもので言語としての意味はないようだった。ただ、明確に子どもの声ではなかった。
何かはわからないが、やっぱり避けておいた方が良いもののようだった。
五条通りに戻って車を横目に自転車を走らせることができるようになると全身の筋肉の緊張がほぐれていくのがわかった。日常に戻ったことを知覚し、自分の精神が変にナイーブになりすぎただけのことだったのだと言い聞かせる。それと同時に今の出来事と紐づいて過去のあることを思い出した。
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