京都に魑魅満ちて

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前置きの能書き  古いモノや者はとびきり古いのに、この都市の上っ面には大学やあるいは大学出てもケレンミを保ちえた変人たちのおかげで妙な進取気鋭の風や異端を許容する風が吹いている。  しかしその底流にはゆったりとではあるが圧倒的な質量をもって流れる何かがある。何かは言葉でいえば理不尽な排他主義であったり非合理的な拘りであったり、諸行への無常観であったり、強烈な独善性であったりするがそのどれもが多面体の一面に過ぎない。むしろそれら悪徳とされるものすら泰然と居座らせてかえって粋の域にまで高めてしまった魔術めいた一面こそが、この都市、京都にはあり、それこそが本質なのだ。  かつて首府であり、欲望の坩堝であったころの京都は当然強い磁場を持ち、様々な魑魅魍魎を引き寄せていた。そして現代も首府の座からは陥落しても、いやだからこそ落ちぶれた恥辱を微弱な電流のように流し続けることによって、進取異端の気流と絡みあい渦を作ることによって、魑魅の跋扈はより一層盛んになっている。    
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