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浩一が一つ目の石にぴょんと飛び乗ると、タクミとナオヤからわっと声が上がった。まさか本当にやるとは思っていなかったのだろう。
それを聞いて気を良くした浩一は、次々と石の上を渡り歩いていく。
なんだ、簡単じゃないか。軽々とジャンプする様子は、もはや熟練者のそれだった。
なんの問題もなくあっという間に川の中心まで行くと、得意げに振り返った。どうだ、弱虫なんかじゃないぞ、もう馬鹿にできないだろう。遠くに見えるタクミとナオヤが途端に小者に思えた。
ふふんと鼻を鳴らし、次の一歩を踏み出そうとしたその時だった。浩一のポケットから何かがこぼれ落ちた。母へ宛てたメッセージカード。
五百円と間違えた時に、きっとポケットの入口まで飛び出てしまっていたのだろう。
「えっ……」
予想外のことに頭が真っ白になる。ひらりひらりと、カードはスローモーションで川面に舞い降りていく。
いけない。あれは大切なカードだ。数日前からこの日のために準備していたものだったのに……――
咄嗟に手を伸ばす。カードが落ちるのとほぼ同時に、浩一はバランスを崩した。
徐々に傾いていく薄紫の世界。視界の端に消える寸前の太陽を捉えた。太陽よりも早く、浩一が地平線に沈む。
ザパンッ……!
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