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車を降りて桜の並木通りを歩き出した星さんの後にわたしもついて歩いた。
「僕の祖父母なんだ」
そうなんだ。
顔が似てたからそうかなって思ってた。
三津谷くんに似てて優しそうだなって。
わたしの反応に三津谷くんが静かに言った。
「……昨日、街で僕を見かけたよね?」
バクン
心臓が鳴って振り向いて、正面に見る三津谷くんを見上げた。
ああ、三津谷くんもわたしに気づいてたんだ。
「……うん」
もう終わりなんだ。
今日の最後に言おうと思ってた言葉を告げる時が来たんだ。
「あのね、わたしね」
覚悟して目をギュッと閉じた。
「このみ、」
柔らかいものが不意にくちびるに押し当てられ、涙が浮かんできてる目に、三津谷くんが指を這わせて睚を拭った。
「好きなんだ」
え?
見上げる先で、三津谷くんが桜の舞う中ではにかむように笑ってた。
「このみに渡そうと思って。僕はもう指にしてるから。結婚してくれるなら、このリングを受け取って」
三津谷くんの左手には白銀の光。
わたしに差し出したのは昨日きれいな女性と見ていた指輪。
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