かの美食家が逮捕された後に

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かの美食家が逮捕された後に

 何故か何故かと私は悩んだが、あの私の食材をメモした手帳を見た刑事が事情聴取の際に、第一声で私にこう浴びせた。 「まさか人間まで食すとは、あなたはイカれてる。バケモノと恐れられても仕方ない」  嗚呼、一体何がいけなかったのだろう。  確かに万百(ばんびゃく)全てが(うま)い訳ではない。中にはただの毒味でしかないと思えない食材もあった。  だが私は美食家なのだ。ただ食を愛し、あらゆる食べ物への欲を追求しただけなのだ。  そう、先月逮捕された美食家は自身の著書となるはずだった草稿にて、これら全てをこう語っていた。  しかしこの手帳を元にした彼の草稿は、もちろん警察に押収されている。  まだ虫や動物ならば許されるだろうが、人間にさえ手を伸ばした人徳に反した美食家(マンイーター)の書いたものなど、世間に出してしまえば半月は毎日バッシングを受ける事だろう。  しかし、もしいつかこれを世に出せるならば……という好奇心もこれを読んだ瞬間に沸いたのも確かである。  さて、本当の美食家とは彼のような化け物(マンイーター)なのか、ただ食に幸せを求めるグルメなのか。  きっとあの美食家の脳は、探究心というプリオンに脳内を侵されたんだろう。  あなたはどちらの思想が真の美食家だと思いますか? END
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