第一章・―最悪×再会―

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「じゃあ、今から死のうね?」  初恋っていうのは思い出として美化されて、とても素敵なものとして残る筈。  ……だと、今、この瞬間まで思っていた。  わたしにこんな事を言って、以前と変わらない、儚げな笑顔で迫るのは、初恋の男性(ひと)……。  ケン君でした。 「ち、ちょっ……」  焦って声も満足に出ない。  当然だよね。  だって、生まれて初めて初恋の人から、ずっと憧れていた壁ドンまでされたんだよ?  これ、普通ならときめく場面。  ね。  普通なら。  ときめく場面だから。  ただ違うのは、ケン君が見知らぬ“誰か”の返り血を浴びた状態で、もう片方の手には血に(まみ)れたナイフを持ってるって事くらいかな。  この時点でもう既におかしいし、わたし、絶望的なんですけど。  いやいや。  おかしいでしょ!?  普通! 初恋の人と再会するって、少女漫画的パターンは、もうそこから恋の炎が燃え盛って加速していくところ!  間違っても命、狙われたりしないからね!?  一体どうなってんのよ、わたしの人生は!? 「ふふ……。震えてるね。怖い? 大丈夫。怖くないよ。痛みなんてない。一瞬で、……終わらせてあげる」  ケン君が昔と変わらない仕草で、わたしのさらさらストレートヘアを、さらりとナイフで揺らしてくる。  ……シチュエーションがシチュエーションなら、目茶苦茶“きゅん”ってなる場面だけど、ナイフ、血(まみ)れだからね。  “きゅん”どころか心臓停止させられるわ。
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