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なんであのヒト、声をかけて来たんだろう。
あげはさんのことを薄情だとか言ってたわりには、たぶんぜったい性格を把握してなかったように思えた。
「…なんだったの?」
「うん、たぶんだけど、あのヒトまだあげはさんに未練ある感じ」
そして、隣にいる俺に諦めさせようと企てたけど、俺じゃなくてあげはさんに一蹴された。
何か少しでも、あげはさんが味方してくれると思ってたんだろう、だけど味方も何もなく。
まぁ、結局は何も覚えてなくて、ただ可哀想なだけだったけど。
「別にいいや、元カレだとしても興味ないし」
思い出すこともしないあげはさんは、何もしてないのに疲れたと言わんばかりの深いため息をつく。
あー、うん、たぶんプラネタリウムの余韻が全部飛んで、ちょっと不機嫌になってるっぽい。
「帰ろ」
きっと俺があの男と同じような立場だったら、今あげはさんの隣に立つこともできなかっただろう。
顔を覚えてくれるかどうかもわからない。
あの時の選択がよかったのか悪かったのかはわからないけど。
歩き始めたあげはさんの手を握り、その手の甲にキスをした。
このことがキッカケで何かが変わってくれることを望むけれど、でも変わらないかもしれない。
分岐点で間違わなかったと思ってほしいな。
いつの間にかあげはさんが呼んでいたタクシーに乗り込みながら、そんなことを思っていた。
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