someday.7

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「別に、どうもしないよ」 …あ、この笑顔はわかる。 あたしに何か隠しごとしてる時の笑顔だ。 だけどきっと、聞いたところではぐらかされる。 ほんのちょっと離れた雷は、演技をしている時の笑顔。 また、何か心境の変化でもあったに違いない。 「…ねぇ?」 「うん?」 演技のまま呼びかけに返事をするから、今は何を言ってもソレで返ってきそう。 それじゃ、雷の本心なんかわからない。 …ヒトのことを言えた義理ではないけど。 「…うん、なんでもない」 「気になるよ?そんな泣きそうな顔してるのに、なんでもないとか言うのは」 「泣き、そう…?」 自分がどんな表情をしているか、鏡がなければわからない。 雷の言うことはホントなんだろう。 「え…、雷、何?」 フワッていう効果音でもつきそうな感じで、力を込めずに抱きしめられて。 最近はコレもなかったから、正直ちょっと戸惑ってしまう。 抱きしめられて、肩に顔を埋めて、雷は何を思っているのか。 「……あげはさん、やっぱり容赦しない、覚悟して」 「え…っと、なんの宣言?」 「ゆっくり待つつもりだったけど、もう待てない」 話が理解できないんですけど。 会話できてない。 離れた雷は演技の顔を全くしてなくて。 さっきの隠しごとの笑顔とは違う、でも何を考えているのか読めない笑顔。 …弱いのに、ホントの雷には。 「あげはさんの全部をもらうから」 「ぜん、ぶ?」 「あげはさんのペースでスキになってもらおうかと思ってたけど、やっぱムリ。俺が限界」
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