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言って、さっきまで雷が寝ていたソファーに押し倒される。
何かを隠したままのあたしと雷。
全部を話すことはしなくても、それでいいと思っていた。
でも、苦しくなる。
…このままでいいと思っていたあの頃に戻りたい。
結婚しても変わらないと思って、高を括っていわゆる高みの見物、状態だった。
だから、周りが少しずつ変わっていくのに、どんどん取り残されていってる感じがして。
「ヤ…待って」
雷の指がゆっくりとあたしの唇をなぞる。
その目は、今まで見たことのない、逃がさないというような獲物を見るみたいな目。
捕らわれる──
そんな感じがした。
あたしが今まで優位に立てていたのは、雷がずっと優しかったから、なんだと痛感させられる。
こんな一面もあったんだと思うと同時に、初めて見る雷をどこか怖く感じた。
「全部、俺のモノにする」
言ってる意味はわかるから抵抗して離れなきゃと思うのに、力もそんなに込められてないのに、抗えない。
涙が流れた気がした。
怖いと思う本能の涙。
その涙を拭いながら、だけど雷はどこか妖艶に笑う。
「泣いたってもう遅い」
「ら、い…?」
「キライになってもいいよ、どうせお互い離婚できないことはわかってるんだし」
それは…この間、周さんに話したこと。
聞いて、たの?
「なんで知ってるか、別に不思議ではないよね。あの時、周さんとの会話聞いてただけだし」
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