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「ゴメン、あげはさん」
「…雷が悪いの?」
「うん、俺が悪い」
微かに微笑むけれど、笑顔にはなりきれていない。
あぁ、失敗した。
まさか、こんなによくも悪くも影響しているなんて。
拾ってついでに畳んでいるあげはさんの側に寄り、邪魔だとわかっていても抱きしめた。
「グチャグチャのままでいいの?」
「支障はない」
されるがままだけど、特にこのことには何も言わないからポンポンと背中を叩く。
あげはさんが側にいて安心している俺のように、あげはさんも俺が側にいて安らいでくれたらいいのに。
そう思っていたとしても、ぜったい口には出してくれないからわからないけど。
「こういう時こそ甘えてこないと」
「なんで?」
うん、本人、無自覚。
もう何年もこういったことが続いていたのなら、もしかしたらこれが日常になっていて当たり前だったのかもしれない。
誰に言うこともできなくて、解決するにはソレに慣れるしかなかった。
だからだろう、甘えるなんて思うこともない。
甘えていいことなのに、ね。
「俺に話してくれたんだから、一人で抱え込まなくていいんだよ」
「ヤ…別に抱え込んでもないけど」
「無自覚だからね」
腕の中、首を傾げる仕草。
そんなこと、こんな至近距離でされると、理性抑えられないんだけど。
抑えるよ、抑えるけどさ。
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