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「とにかく、自分の部屋に洗濯物持っていって」
ビシッと部屋の方を指さし、少し睨みながら言ってくる。
これはまだ恋愛系の返しが思いつかなくて、悔しいとかムカつくとか思っている時の行動。
そこをおもしろがって深入りすると、拗ねて部屋に閉じ籠もるから。
今日はそこまでしない。
言われた通りに部屋に持って行って。
すぐにリビングに戻ると、置いていたケースをジッと眺めているあげはさん。
「どした?」
「…こんなんだったかなって思って」
「そりゃずいぶん前のことなんだし、覚えてなくて当たり前じゃない?」
さっき部屋に行く時、一緒に持って行けばよかった。
見たくないだろうケースを全部持ち、あげはさんの頭をポンポンと子供をあやすように触れる。
それで自分がどんな表情をしていたのかわかったらしく、目を合わせて苦笑い。
「ゴメン、辛いこと思い出させて」
「さっきも謝ってもらったけど」
「さっきはさっき、今は今」
意味がわからないと眉を寄せるあげはさんの髪をクシャッとして、今度はこっちが苦笑いを浮かべて手を離す。
明日、事務所に持って行こう。
ここに置いていて、あげはさんの目に入ってしまわないように。
「雷が、辛そうにすることないのに。ゴメンね?あたし、こんなんで」
「あげはさんは今のままでいい。こんなんでとか次言ったら押し倒す」
「どんな脅しだ」
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