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一緒に住み始めてもうすぐ一年になるのに、あまり知ろうとしていなかったせいか知らないことだらけ。
あげはさんとこんな話をするのは初めてだし、過去に何があったかなんて聞こうとは思っていなかった。
実際聞いて、いつものようにケロッと言ってくれればもう大丈夫なんだと思えただろうけど、まだ気持ちに整理がついていない感じで大丈夫とか思えなくて。
「あげはさんのキズごと愛してあげるからね?」
「…はぁ、どーも」
「反応がテキトーすぎる」
「だって、なんかのドラマで聞いたようなセリフ」
俺は言ったことないけど。
誰のドラマを見たんだろう。
「歯の浮くようなことよく言えるわね?」
「本心なんだけど」
「恥ずかしくない?」
「イヤ、別に?」
「あー、役者だもんね」
え、それってどんな納得の仕方?
だけど、こんなくだらないことで楽しそうに笑っているから。
辛そうにする顔なんて見たくない。
あげはさんが笑って穏やかに過ごせるように、俺が努力すればいいだけのこと。
もうすぐ、出会って一年。
結婚して半年の、賭けをした時が迫ってきてる。
俺の気持ちは変わっていないけど、あげはさんは何か変わっただろうか。
怖くて聞けないけれど、その時が来たらきっとあげはさんはハッキリと答えを出すだろう。
二月に出せなかった答えを。
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