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「あげはさん?」
頭に直接響いてくる声。
「ねぇ…一年前のこと、覚えてる?」
「同居を始めた時のこと?」
「そう」
今日が一年前のお見合いをした日。
あの頃とは何もかもが変わった。
「覚えてるよ?」
「賭けのことは?」
「うん、覚えてるけど、それがどうかした?」
あの日の賭けはあたしの勝ち。
だから、戦利品はもらわないと、ね。
まだもらってないから。
「何を賭けたかは?」
「お互い自分自身だったよね」
一年前のこと、雷はもう忘れているかと思ったけど、ちゃんと覚えてる。
あたしはすっかり忘れてて、思い出したのは今。
「あの時、勝ったのはあたし、よね?」
「うん、そうだね。俺はあげはさんオトせなかったし、あげはさんは俺をスキにならなかった」
モゾッと雷が動いて、あたしの上に覆い被さっている感じ。
何を思っての行動かはわからないけど、両手は握られている。
その両手を握り返して、真っ直ぐ雷の目を見た。
「あたし、まだ報酬もらってない」
「え?そうだっけ?」
それはもうホント、心底不思議そうに聞いてくる。
「もうあげたつもりだったんだけど?」
その言葉にあたしは小さく首を横に振った。
「雷自身をくれるんでしょ?」
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