someday.9

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「あげはさん?」 頭に直接響いてくる声。 「ねぇ…一年前のこと、覚えてる?」 「同居を始めた時のこと?」 「そう」 今日が一年前のお見合いをした日。 あの頃とは何もかもが変わった。 「覚えてるよ?」 「賭けのことは?」 「うん、覚えてるけど、それがどうかした?」 あの日の賭けはあたしの勝ち。 だから、戦利品はもらわないと、ね。 まだもらってないから。 「何を賭けたかは?」 「お互い自分自身だったよね」 一年前のこと、雷はもう忘れているかと思ったけど、ちゃんと覚えてる。 あたしはすっかり忘れてて、思い出したのは今。 「あの時、勝ったのはあたし、よね?」 「うん、そうだね。俺はあげはさんオトせなかったし、あげはさんは俺をスキにならなかった」 モゾッと雷が動いて、あたしの上に覆い被さっている感じ。 何を思っての行動かはわからないけど、両手は握られている。 その両手を握り返して、真っ直ぐ雷の目を見た。 「あたし、まだ報酬もらってない」 「え?そうだっけ?」 それはもうホント、心底不思議そうに聞いてくる。 「もうあげたつもりだったんだけど?」 その言葉にあたしは小さく首を横に振った。 「雷自身をくれるんでしょ?」
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