someday.9

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「雷はあたしをスキになって後悔したの?」 「するわけない」 「スキになっちゃダメなヒトじゃないんだし、あたしだってしないわよ」 そっかと言って笑う雷は、ホントに嬉しそう。 あれだけあたしに毎日スキだって言って、スキにならせるんだって息巻いてたクセに何を言ってるのやら。 起き上がったあたしの髪に再び触れる。 「スキね、触るの」 「うん、だって、柔らかくてフワフワして気持ちいい」 「あー、そう…」 無邪気な笑顔ってこういうのを言うんだろうか。 もう、とにかくずっと笑顔。 やっぱりわかんないや、雷のこと。 「…今日、仕事は?」 「離れたくないなぁ」 「イヤ、仕事」 「あげはさん、つれない」 何もつれなくないでしょう。 こっちはただ仕事があるかないかを聞いただけなのに。 「あと二時間後に出るよ」 「じゃあ、今からご飯作ろうか」 「んー…いい。時間いっぱいあげはさんを放さない」 「お腹空かないの?」 「今は胸いっぱいで、たぶん食事は喉を通らないかな」 言って、ギュッと抱きしめられる。 少し戸惑いながらソッと背中に腕を回せば、ありがとうと小さくつぶやく声。 あたし、何もしてないのに。 ホントはずっと言いたくて、でも期限があったからそれが足枷のようになっていて。 たぶんソレを雷に言えば、守らなくてよかったって言うんだろうけど。 なんか、最後は意地?みたいな感じだった。 「待ってくれて、ありがと」 「どういたしまして」
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