someday.10

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「雷…?」 おあずけは今に始まったことじゃない。 なんでも限界はあるってことで。 起き上がった俺に不思議そうに声をかけてくるあげはさんは、右手を伸ばしてくる。 その手を掴み引き起こして抱きしめた。 あげはさんに会う前の俺は、ガマンするなんてことはなくて。 差し出されたものはおいしく頂いていた。 なのに… 漠然と何かが怖い。 今は。 溺れてしまうのは構わない。 その反面、めちゃくちゃに壊れるほど、この腕の中から放したくない感情。 そう思っていることを悟られたくなくて、不安で怖いのかもしれない。 「急に黙ってどうしたの?」 「…うぅん、なんでもない」 「わっ!」 小さく苦笑いを浮かべ、だけどこれ以上聞かれないように、抱きしめたまま立ち上がる。 「寝よっか」 「え?あ…うん」 落ちないようになのかはわからないけど、首に腕を回して体重を預けてくる。 見た目通りに軽いから、そんなことしなくても大丈夫なんだけど。 「え?一緒に?」 「そだよ」 あんな話をしたあとだからだろう。 敷かれている布団の上に下ろせば、警戒しているような目。 「何もしないって言う保障はないよね」 ニコニコと言えば、諦めたのか深いため息。 ソレ、若干傷つく。 ちょっとだけ、あげはさんの本音を聞いて、さすがに今日は何もできない。 いろいろとガマンは限界に近いけど、気持ちをムシしてする行為はただ嫌われるだけだと思うから。 「あ、お風呂」 「…あー、シャワーは浴びてる」 横になって後ろから抱きしめると、すぐに睡魔が襲ってきて。 「先に…寝るかも…」 「うん、おやすみ」 今は、仕事が忙しい方がいいのかもしれない。
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