シャッター音と君の聲

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 花畑の解説や世話をするアンドロイド達がにこやかに観光客を案内し、解説をしている光景を傍目で見ながら思う。昔の“いかにも機械”とわかるようなロボット達とは違い、今の彼らは殆ど人と変わらない見た目を維持することができるようになっていた。声もどんどん人間のそれに近くなっている。搭載されている優秀な人工知能は何千、何万、何億もの会話パターンを記録しているので、観光客の多彩な質問に答えることが可能だそうだ。  人間の労働力に代わる存在として、アンドロイドが注目され始めてから久しい。それでもまだ、彼らは生きた生命とは程遠く、人間に及ばない領域があるのも事実だ。何せ、彼らには自分の“心”というものがないのだから。 ――心を持つアンドロイドなんでものを開発できたら、きっとノエル科学賞モノよね。そんな日が来るとは思えないけど。  心があろうがなかろうが、多くのアンドロイド達は人間が理想とするような美しい見目を備えている。被写体にして叱られることもないし、景観を損なうこともない。私はシルバーマリーの水やりをする、メイド風の装いをしたアンドロイドの背中を捉えた。どこか人工的で家庭的、この角度なら風車も写る。なかなか悪くない一枚が撮れそうだ。  こんな綺麗な花畑で死ぬのも悪くないな――私がそんなことを考えながらシャッターを切ろうと指をかけた、その時。 「!?」  いきなり。画面が塞がれた――ドアップになった人の“顔”によって。 「きゃあ!?」 「うひゃあ!?」  思わず悲鳴を上げる私。すると私の悲鳴に驚いたのか、その人物の方が道端に尻餅をついてしまった。ドシン!とかなり重たい音がして再度“痛いー!”と声が上がる。  それは、薄緑色という極めて珍しい髪色に同じ色の瞳をした――小さな男の子、だった。年は七歳とか八歳とか、それくらいの年齢だろうか。 「ご、ごめん!……って、いきなり飛び出して来ないでよ、せっかく写真撮ろうとしてたのに失敗したじゃないの!」  小さな子供のすることをあまり派手に責めるのは大人げないが。それくらいの文句は許されるだろう。ファインダーを再び覗けば、驚いた拍子に押してしまったのか、まるで心霊写真のようなブレブレの謎の光景が撮影されてしまっているではないか。ナントカの写真下手くそ選手権か、と思わずツッコミたくなるほど意味不明の画像である。ゴミ箱ボタンを押してため息をつく私だ。 「す、すみませんです!声かけようとして失敗したです!」  少年はわたわたしながら頭を下げてくる。声をかけようとした?という言葉に思わず首を傾げる私。すると彼はとんでもないことを言い出したのだ。 「僕、未来から貴女に会いに来たんです。シャーリーさん……いえ、僕の“お母さん”に!」
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