3.藤倉くんと小さな魔法

2/2
182人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
どくりと、心臓が嫌な跳ね方をする。 俺は今初めて、写真に納めたくないきみのカオを見つけてしまったよ。 いつもどんな瞬間も眩しくてきらきらしてて、たまに曇ったとしてもそれでもまた輝いて。その温もりが心地好くてただ少しでも傍に感じていたくて。 一時たりともきみの表情から目を離したくないのに俺は、今日初めて見たくないと思ってしまった。 俺の胸の奥を遠慮無く抉るその笑顔は、自らを貶めるようなその自嘲染みた笑顔は余りにも俺には苦しかった。 もう二度とこんなカオはさせたくない。 何でって、きみが苦しんでるからだよ。 俺が苦しむと自分も苦しむのだと教えてくれたきみ自身がそんなカオをするのを、俺が赦せる筈がないだろう? そのカオに少しでも俺の行動が起因しているのなら、尚更。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!