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4.澤くんと小さな波
「あー。俺の馬鹿ぁ…」
あんなこと言うつもり無かったのに…。
教室で頭を抱えて突っ伏していると、周りからざわざわと声が降ってきた。
「隊長!澤隊員の元気が無いです!」
「何?それはきっと彼が関係しているのでは」
「連れてきますか」
「いや、いい。だって見つかんないんだもん」
「そうよねぇー」
「…お前ら、キャラブレッブレだな」
彼、というのは言わなくても奴のことだろう。確かに奴に関係しまくってるけど今は連れてこないで欲しい。
というかついさっき会ったばっかりなんだよ。
「隊長、澤が喋りました」
「さっきから唸ってはいるけどな」
「んんー…」
「あ、また凹んじゃった」
「ありゃあ」
周りの声をBGMにして、俺はまた机に突っ伏した。
あいつらわざとふざけたようにしてみせてるけど、きっと心配してくれてるんだろうなぁ。
余裕が無くて申し訳ない。
俺は…本当に自分のことばっかりだ。
ずっと自分の中に閉じ込めておこうかと思っていたモノをよりにもよってあいつに一番に話してしまった。
何て弱いんだろう。
だけどあいつはきっと気付いてた。
気が付いていて、吐き出させた。
俺が無理矢理あいつにしたのよりもずっとずぅっと優しい方法で、魔法みたいな方法で俺の中に突っかえていたモノを引き摺り出してしまった。
それが例え、自分自身を傷つけるものであると分かっていても。
だから俺は自分が許せないんだ。
俺がもっとしっかりしていれば、もっと固く固く閉ざしていれば、もっと嘘が上手ければ…?
或いはもっと違う方法で誰も傷つけずに済む方法があった筈なんだ。
ある、筈なんだ…。
頼むからもう、あいつが苦しむ姿だけは見たくない。
俺なんてどうだっていいから、だからもう…藤倉だけは。
こんな奴の為に、俺なんかの為に。
…傷つかないでよ。
「隊長ぉー。澤がまた黙り込んじゃったんですけど」
「放っといてやろう。そんな日もあるさ」
「ホントに藤倉くん連れてこないでいいんすか?」
「ケンカしたのかもしんないじゃん」
「そっかぁ。あの子ったら…抱え込む癖あるからなぁ」
「見守るしかないか…今はな」
「あ、家の近くのポメ連れてきましょうか隊長」
「学校にわんこ連れてきちゃいけません」
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