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☆美森の苦い初恋の思い出
ーー生まれて初めて彼氏ができた。あれは中学2年生の時だ。
クラスメートで、サッカー部に所属していた林田 幹太という男子だった。
数ヶ月前に交通事故に遭って足に怪我をした彼は、もう以前のように走れない身体になってしまった。小学生の頃から続けていたサッカー部も退部し、自暴自棄になって遊び呆けていた彼とよく遊ぶようになり、なんとなく付き合う流れになったのだが……。
明るくて元気で、一緒に遊んで楽しい男子だった。
「美森、お前、あのサッカー部のDQNと付き合い出したのか?」
「律也……ドキュンってなに?」
「いや、運動部の輩はみんなだいたいDQNだろ。特にサッカー部は脳内カーニバルな頭がイかれてる連中ばかりって相場が決まっている」
「偏見がものすごい…全国の運動部のみんなに謝りなさいよ?それと、幹太は今は帰宅部だよ。まあ…頭はバカだけど、イかれてないよ!」
「バカと付き合うボランティアか?お前も暇人なんだな」
「律也には関係ないでしょ!」
付き合ってしばらく経った頃、しばらく疎遠にしていた律也が学校で話しかけてきた。
(……感じが悪い……)
意味のわからない発言を残し、その場は不貞腐れたような顔で去って行った。
ーーまた数週間経って、その頃、クラスメートではあったが、今まで接点がなかった律也と幹太が仲良くなった。
休み時間、昼休み、放課後、日曜日も、何故か2人で遊んでいた。
「ねえ!幹太、ゴールデンウィークさー。遊園地でデートしようよ〜!」
「あー悪ぃ、律也とイベントに行く予定があるんだ。後、しばらく忙しくて会えねえわ」
「また律也の家に行くの?可愛い彼女を放って置いて、いつも2人でこそこそ何やってるのよ!?」
「ワガママ言うなよ〜、仕方ねえだろ〜!」
いつもこの調子だった。
その時、近くにいた律也はニヤッと笑っていた。
バカと付き合うボランティアのつもりなのかな?でも何故か、いつもどこか空元気だった幹太の表情がやけにイキイキしていた。
怪しい……と女の勘で思った私は、とある金曜日の夜ーー律也の実家へアポなしで突撃した。
毎日のように、幹太が律也の部屋に入り浸っているのは知っていたし、律也の実家は、私の家の三軒隣だったから。
足音立てずに階段を上り、律也の部屋の扉をバーンッと勢いよく開けた。
「ギャア!美森!?なんでお前が…!」
「美森、何か用?」
漫画の原稿用紙に溢れたローテーブルで向かい合って、律也と幹太が百合モノのエロ漫画を描いていた。
私は目を点にしてフリーズしていた。
「なっ…何、ヤってるのよ!?アンタたち……!」
「紛らわしい言い方するな!見てわかるだろ?イベントに出すための漫画を描いてるんだよ!」
「なんで幹太が?」
「律也に誘われて初めて百合アニメ観てさ…たかがアニメなのに、すげえ感動したんだ、俺。美少女たちの甘くて、ちょっぴりビターで繊細な愛が(割愛)、今度律也とオンリーイベントに参加することになったんだよ!サッカー以外でこんなに夢中になれるもの、俺、初めてだ…!」
目をキラキラさせて熱く語るバカと、『…計画通り』とニヤリ笑う律也。
そう、私は悟った。律也に彼氏を取られてしまったのだ。
彼氏にはその後振られた。
本当に、律也と関わるとろくな思い出がなかった…。
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