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崖っぷちになるまでの経緯…
私、山田 美森は、何の取り柄や特徴もないザ・平凡って感じの女子だった。
そんな私だが、地元の大学を卒業後は何度も就活に失敗しまくり、人生に躓いていた。
そして、何となく実家で暮らしながら、バイトをいくつか掛け持ちし、就活浪人3年目。
私はとにかく昔から要領も悪くて、ヘタレた冴えない女だった。
両親は優しい人で、駄目駄目な私でも受け入れて愛してくれた。けれど、心配が度を超え過ぎて過保護&過干渉な人達だった。
「美森ちゃんには美森ちゃんのペースがあるわ。だからあなたのペースで就活も頑張れば良いのよ」
「亜澄姉ちゃんとは違ってお前は不器用なんだから、出来ないことを無理する必要はない。女の子なら無理に就職しなくたって、結婚して養ってもらえばいいさ。身体だけは丈夫なんだから子供もいっぱい産めるだろう」
両親のフォローが身に染みる…。
私の3つ上の姉は、私なんかと違って子供の頃から頭も良くて、美人で優しくて快活、運動だって出来て、パーフェクトヒューマンだ。
大学卒業後は上京して大手企業に勤めるバリバリのキャリアウーマン、私が憧れる女性像そのものだった。
憧れるし、もちろん大好きで自慢の姉だがーー、私は小さい頃から姉に対してコンプレックスを持ち続けていた。
だから、他人を羨むばかりのパッとしない人生に嫌気がさして、どうにか自分を変えたいと思い立った。
「都会で仕事を探す!実家を出て自立するから」
そんなことを言いだした私に、両親はやっぱりああだこうだと「無理、無駄」を連呼してきた。
大都会で1人でやっていくのは無謀だろう、心配だからーーと猛反対されたのだが、姉の住んでいるマンションで暮らす事を条件に許しを得た。
そして上京後、派遣会社に登録し、派遣社員として働きながら就活を頑張っていた。
ここでの生活にも慣れてきた頃ーー。
派遣先の正社員・平谷アキラ。
陰気な雰囲気があって、数は少なく、オフィスでも浮いている感じの男性社員に、私は絡まれてしまった。
ある日の終業後、いつものようにオフィスで残業をしていた彼に、何気なく缶コーヒーとコンビニで買ったお菓子を差し入れた事がある。
以前、業務でちょっとしたミスをしてしまった時に親切にフォローをしてもらったので、その礼のつもりだった。
思い込みが激しい傾向にあった彼は、それを私からの好意ーー恋愛感情だと誤認したようだ。
あれから、彼に付きまとわれる事が多くなった。
熱烈なアプローチを受け、スマホのメッセージは1日に少なくて50件、深夜のおやすみコール、早朝のおはようコール、就業時間は異なったが、夜間や休日には私の家の周りをウロウロするようになった。
だから、本人に面と向かって、きちんと「迷惑です」と言った。
そうしたら、彼は逆上して泣いて怒鳴り喚いていた。
それから何がどうなったんだろう。
もしかすると彼が派遣会社に何か告げたのか、ずっと前に契約更新の話も出ていたのに、突然契約を打ち切られてしまった。
派遣会社からも登録を解消され、職を失ってしまったのだ。
それから、姉が「海外に出向していた彼氏が帰国する。うちで同棲始めるから、さっさと荷物をまとめて出て行ってくれ」と唐突に言い出し、当面の生活費を押し付けて、私をアパートから叩き出した。
職も家も失った私はネットカフェ難民になってしまった。
就活はやっぱり上手くいかず、とりあえず本屋さんでの仕事が決まったけれど……後は住むところだ。
「それなら、私が所有してるマンションの部屋がルームシェア物件があるの。ちょうど、ひと部屋空いてるから、安く貸してあげるわよ」
知り合いの橘 早希ーー早希姉さん。
私の姉の親友かつ幼馴染で、美人で優しいお姉さん。
藁にもすがる思いで彼女に相談すると、ルームシェア物件のひと部屋を相場より破格の家賃で部屋を借りる事が出来た。
職場である本屋さんも徒歩の距離で、しかも家賃は激安、夢のような物件だった。
「め……女神……、いや、早希姉さん!ありがとう〜!」
「女神?ウフフ…、弟の律也もそこに住んでるけど~問題ないわよね?あなたたち幼馴染なんだし、今更気を使うような関係じゃないでしょう?」
「げっ……、律也……?」
私の顔は真っ青になる。
「私、結婚してから地元に戻っているでしょ?だから、律也にあの部屋の管理を任せているの。あの子も美森ちゃんなら別に良いって言ってたわーーでも、美森ちゃんが嫌なら…」
「いいえ!とんでもないです!住む場所なんて選べる立場じゃないわ。あの…よろしくお願いします!」
私は捨て鉢になって、叫んだ。
(そうよ。働いて、早くお金を貯めてアパートを探そう。就職先もーー)
その考えが間違いだった……?
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