デート前夜のメタモルフォーゼ

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 弟の泰輝君は短髪に小麦色の肌の快活そうな中学生で、妹の舞衣ちゃんは黒髪ミディアムヘアが綺麗な今時の女子高生って感じの女の子だった。  2人は帽子にサングラスで即席の安っぽい変装をして、兄である大島さんのデート(仮)を監視していたそうだ。  真面目な兄が変な人に引っ掛かっていないか、心配だったらしい……。 「兄貴……、やっぱり、そのオカマと付き合ってんのかよ?いつからそんな変態になったんだ」  弟の泰輝君が声を荒げた。  私のことを訝しげな顔で見ている。  ーーやっぱり、兄弟にも私が男だって話しているの?  めちゃくちゃ誤解なんですけど……。 「コラ、泰輝。そんな言い方はないだろう!?山田さんはただの同居人だからー。ごめんね、山田さん」 「ウウン、あはは〜。そうだよ。大島さんと私は、泰輝君が考えているような仲じゃないから安心してよ」  私は苦笑して、思いきり首を左右にブンブンと振って否定した。  すると、黙っていた妹の舞衣ちゃんが私に真顔で接近して首を傾げた。 「ねえ、山田さんって本当に男、なの?」  私の全身を舐めるように観察している。 「あはは…」  なんて言えば良いのやら…。  大島さんはハァ〜っと深い息を吐くと、弟妹の頭にポンっと手のひらを置いた。 「お前らーー。俺には実家に帰ってくるな、家族離れしろとか言っといて…。兄ちゃんのプライベートに干渉するつもりか?好きにしろって言ったのはお前らだろ?」  弟妹を前にした大島さんは、なんだか兄の顔をしている。 「兄貴ってしっかりしてるようで、ぽやっとしてるから心配なんだよ」 「はいはい、心配ありがとな。余計な心配だけど」  兄と弟妹のやり取りを見て、私は思わず笑ってしまった。  そしてカバンからスマホを取り出すと、弟妹に向かって掲げる。 「ーーあの、よかったら、連絡先を交換しない?私は大島さんと同居してるし、君達に代わってお兄さんの監視と、有事の際には報告メッセージ送ってあげるよ」 「……や、山田さん!?」  弟妹はクスクスと笑い出した。  そして連絡先の交換に応じてくれた。  大島さんはオロオロと戸惑っている。 「任せて。私がしっかり見守ってるからね!」 「ありがと〜!山田ちゃん、めっちゃ頼りになる〜」  思いのほか、喜んでくれたようだ。 「兄さん、確かにウチらは家族離れしろって言ったけど……たまには顔見せに来なさいよ。それくらいなら、普通にいつでも歓迎よ」 「え?ああ……」 「デート?邪魔して悪かったわね。ウチらはもう帰るから」 「ああ…」 「じゃあね〜」  弟妹は大きく手を振って退散した。 「ステキな弟君と妹さんね」 「ああ」  大島さんが弟妹を見つめる目は、温かくて優しかった。  その横顔を見て、私はなんだかほっこりしちゃった。 「私たちも帰ろ!」 「うん」  デート(仮)からの帰り道ーー、私たちは2つの長い影を並べて家路についた。
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