魔法少女爆誕

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 日付は変わって土曜日の深夜2時、私は魔法少女のコスプレをしながらせっせとオニギリを作っていた。  マグカップにお湯を注ぎ、インスタントコーヒーも淹れた。  そうして夜食をこしらえて向かったのは律也の部屋だ。  スウェット姿に黒縁メガネ姿の律也は、テーブルの上で漫画の執筆作業に取り組んでいた。 「はい、夜食だよ」 「あざす、そっちに置いて」  もう5〜6時間ぶっ通しで同人漫画の手伝いを強要され、挙句には「腹が減ったから飯を持ってこい」と命令された。  律也はネット上では結構有名な絵師らしく、もちろんそれはリアルでは伏せている。  魔法少女や美少女アニメの二次創作漫画やイラストをよく描いていて、今は18禁な内容の薄い本の原稿を2人で作業しているのだがーー。 「律也って、レズビアンものが好きなのね」  何故か、私は今、美少女と美少女が秘め事をしているシーンのゴム掛けやベタ塗りを任されている。  イラストはプロ級に上手で、でも描いている画はどぎついラブシーン……? 「生々しいワードを出すな。百合って言えと、何度言えばわかるんだ」 「はいはい……」  私の姉は腐女子で18禁BL漫画の原稿を、中学1年生のいたいけな妹に頼むような人だった。  だから、私はこういう漫画にた耐性が付いている。今更、驚かない。  私はドスンとベッドの上に腰を下ろすと大きな欠伸をして、眠気が我慢できなくてそのままベッドの上に横たわってしまった。 「疲れた…もう無理…」 「おい、俺のベッドだぞ。っていうか男の部屋、男のベッドでよく無防備に眠れるよな」 「アンタは男じゃない……ただの幼馴染でしょ、いや……アクマだよ」  まぶたが重すぎて開かない、ウトウトしながら返答した。 「俺もとうの立ち過ぎたコスプレおばさんは女に見えないわ」 「同い年でしょ!それにコスプレをさせたのは律也じゃないの」 「18過ぎたらみんなババアだろ。はあ…、やかましいから、眠れば」  その後は沈黙が続いていた。  平日は会社があるから、土日に夜更かしをしてがっつり作業を進めるようだ。  部屋のテレビからは撮りためておいた深夜アニメが延々と再生されている。  姉も同じタイプの人間だったから、なんだか実家のような安心感がある。  私自身は漫画やアニメ文化にはそこまで詳しくないがーー。
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