魔法少女爆誕

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 最近出来たばかりの超大型ショッピングモールは、日曜日という事もあり大賑わい。  ほぼ律也の買い物のために、画材屋や書店などのテナントをハシゴしていた。荷物はその度に、一階中央のコインロッカーに一旦預けている。 「どんだけ買うのよ」 「頼もしい荷物持ちがいるからつい…、もうこんな時間か。今夜は外食しよう。俺が奢ってやるから」 「ありがとう…」  律也は私の右手首を掴むと、誘導するようにグイグイと引っ張り、無言で歩き出した。  2階にフードコートがあるし、ファミレスやファーストフード店に連れて行くんだと想像していたが、予想外にもオシャレな雰囲気のある落ち着いたカフェレストランだった。  時間的に、どの飲食店も混み合う時間帯なのに、すんなり席に通された。  どうやら、律也が事前に予約を取っていたようだ。 「ここのパスタ、美味いんだよ。お前、麺類が好きだったろ」 「うん。よく憶えてるわね。わあ〜、ナスと海老のミートパスタが美味しそう。でも、カルボナーラも捨てがたい……」 「じゃあ、その2つを頼んだ、2人で分けたらいい」 「いいの?律也」 「小さい頃も、よく半分こしてたろ?お前が優柔不断で、なかなか食べたい物を1つに絞れなくてさ」 「だって、どっちも美味しそうだし…。でも、ありがとう。律也は食べたいものとかないの?」 「どっちでもいい。ああ、この唐揚げも食べたい」 「…鶏肉のフリット?、美味しそう〜。私も食べたい」 「半分やるよ。俺はお前みたいに食い意地張った豚じゃないから全部は食えないや」 「アンタね…!いっつも一言余計なのよ」  リーズナブルなイタリアンのお店だったけど、どれも本格的で美味しかった。  私は満足してニコニコ笑いながら食べ進めていた。  向かいに座ってパスタを食べている律也の唇も、心なしか口角が緩み、笑んでいるような気がした。  そして会計時、律也が奢ってくれたのだがーー。 「本日、カップルは2割引です。ーーー」  感じの良いウエイターさんがニッコリ笑いながらレジ対応をしてくれている。  律也も外面の笑顔で財布を取り出し、お金を払っていた。 「カップルじゃないんだけど…」 「割引あった方が安く済むだろ。余計な事は言うなよ」  ボソボソと耳打ちで会話をした。 「うーん…」  レストランを出た後、コインロッカーで荷物を回収し、律也は荷物をそのまま中央サービスカウンターへ運んだ。  そして、何か手続きを始めた。  そうして、荷物はカウンターに預けたまま、手ぶらでその場を離れる…。 「律也?荷物は?」 「ああ。あのショッピングモールの有料会員になると、買った商品を自宅まで配送してくれるんだよ」 「エッ!?じゃあ、荷物持ちの私は必要ないじゃない!」 「必要だよ」  そう言うと、律也は1階の大きなインテリアショップに入った。  そこで、食器や箸、スリッパに、シーツなどの必要な生活用品をまとめて購入することになった。 「俺が立て替えておくから、給料もらったら金返せよ」 「ありがとう」 「これはすぐ使うから、このまま持って帰るぞ」  そう言って、さりげなく食器などが入った重たい紙袋は律也が持ち、比較的軽い紙袋を私に差し出してきた。  すっかり夜になり暗くなった駅までの道、2人で肩を並べて歩いていた。  (なんだか、幼い頃の私と律也に戻ったみたい……?)  ちょっぴり嬉しくて、楽しい気分になった。
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