魔法少女爆誕

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 翌朝、私は魔法少女のコスチュームの上からエプロンを着て、簡単な朝食の用意をしていた。 「お早う、山田さん」  スーツに着替え、身支度を済ませた大島さんがダイニングに現れた。 「あ、おはようございます。大島さん。早いですね。朝食を作ったんですけど、どうですか?」 「わざわざありがとう。しかし、本当にすごい格好だよな……」 「目に毒でごめんなさい……昨日も説明したけど、同居の条件なんです」  昨日会ったばかりの大島さんの前へ、コスプレ姿で出るのは羞恥プレイ……。  大島さんも苦笑いをしていた。  トースト、ウインナーに甘めのスクランブルエッグとくし切りにしたトマトやレタス、コーヒー。  シンプルな朝食を3人分用意しておいた。  私も今日はバイトがあるが遅めの出勤だ。  朝はいつも余裕があるので、平日の朝食も作ることにした。 「大島さんはいつも早いんですか?電車通勤ですか?」 「いや…、余裕を持って出勤してるんだ。コンビニでパンと缶コーヒー買って、会社の休憩室で朝は食べている。職場は…徒歩で片道15分くらいだ。律也とは会社は違うが、オフィスが同じビルに入ってるんだ」 「へえ…職場が近いって便利ですよね。私も近くの本屋でバイトしてますよ」 「ああ…、あの大きい本屋か?」  第一印象ではクールで気難しそうな雰囲気があったが、意外にも気さくに話し掛けてくるし、落ち着いていて優しい人だ。  しばらく談笑していると、律也が大きな欠伸をしながら登場した。  前がはだけたシャツに寝癖のついた髪、ブラウン系のスーツのスラックスにはベルトも付けていない。  昔から低血圧で、朝は苦手なようだ。 「また夜更かししてたんでしょう?今日は月曜日なのに」 「撮りためていたアニメを全部観たんだよ、あとネットサーフィンしてた…」 「コーヒー淹れたから、これ飲んでシャキッとしなさい。襟が立ってる、ネクタイ落としてる、靴下も左右違うじゃない。だらしないわ。本当、大島さんとは大違いね。朝食の前にヒゲも剃って、顔を洗ってきなさい」 「うるさい。お前は俺の母親か」  私と律也のやり取りを、大島さんは物珍しそうに眺めていた。 「山田さんと律也は、本当に仲が良いんだね。幼馴染だって?」 「腐れ縁です。ハブとマングースみたいな仲ですかね?天敵ですから」  私はすぐさま訂正した。  それから30分経って、ようやく起動した律也はスーツをきっちり着て、髪をセットーーすっかり爽やかイケメン風なオンモード。  朝食を食べると、もう朝の8時を大きく過ぎていた。 「美森、お前、バイトは何時までだ?」 「フルタイムで19時だよ。夕食は鍋に作り置きしておくから。いってらっしゃい」 「……行ってきます」  律也は私にフイッと背を向けて、そう言うと出社した。 「なんか、ちょっと変な気分」 「山田さん、俺もそろそろ出るから。朝食、ありがとう」 「はい、いってらっしゃい〜」
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