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☆律也と大島のメールのやり取り
ーー大島 彩人は28歳の会社員。
友人の橘 律也のマンションの部屋を間借りしてルームシェアをしていた。
俺は10年前、高校3年生の頃に交通事故で父親を亡くした。
専業主婦だった母や幼い弟妹を養うために、大学進学も諦めて就職した。
そこそこ給料の良い会社に勤めながら、毎月実家へ仕送りを続けている。高校生の妹と中学生の弟には何かとお金がかかるので、相場よりずっと格安に部屋を借りられて助かっている。
実家は郊外にあって、平日はマンションで暮らし週末は実家へ帰る、という生活をもう何年も続けてきた。
その日も、大阪出張から戻ってくると、そのまま実家へ直帰していた。
すると、律也からメールが来たのだ。
『大島さん。突然で申し訳ないんだけど、新しい入居者が来ることになったから』
相変わらず淡々とした文章だ。
俺はすぐに返信した。
『そうか。俺の部屋の向かいの部屋が1つ余っていたもんな』
『ああ、山田 美森という子だ』
『え?女の子なの?』
てっきり男なんだと思い込んでいた。
以前も、友人に部屋を貸していたことがあるが、全員律也の男友達だったから。
俺が返信すると、しばらく返事が来なかった。
1時間後、再度律也からメールが来た。
『……心は、いや見た目も女の子なんだが、複雑な事情がある子でね』
意味深なメッセージに、俺は首を傾げていた。
『何?』
『実はーー男なんだけど、最近タイの整形外科で手術して女の子になったんだ。最近帰ってきたばかりで…』
『えっと、適切な言葉がわからないんだけど…ニューハーフって言うやつ?』
『それ』
俺がスマホを見つめながら驚いていると、また律也からメールが入った。
『そんな事情があるから、両親と折り合いが悪くて実家には帰れなくてさ。幼馴染の俺を頼って来たんだ』
『そうか、きっと、いろいろと苦労して来たんだろうな。俺は歓迎するよ』
『ありがとう』
そして、日曜日の夜にマンションへ戻るとーー早速、彼女(彼?)とばったり遭遇した。
風呂に入っていた途中らしく、裸にタオル一枚巻いた女の子がダイニングに居て、かなりビックリしたが…。
就寝前、布団の中で、もう一度思い出してみたのだがーー。
「やっぱり……。どこから、どう見ても女の子だったな…」
タイの性転換手術は進んでいるんだろうか…?
ぼんやり考えながら、俺は眠りについた。
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