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それから将太はお山で毎日カラス姫と遊んだ。うさぎをおいかけたり、木登りしたり、雪だるまも作ったし、すべりっこもした。
カラス姫はお山のことを何でも知ってていろいろ将太に教えてくれた。でも空を飛ぶところは一度も見せてくれなかった。
それでも将太はカラス姫と遊ぶのが楽しかった。カラス姫はケラケラよく笑って、その笑い声を聞くのが好きになった。
「カアカア」
お山に行くと将太は口に手をあててカラスの真似をする。そうするとすぐにカラス姫がやってくる。
これは二人の遊びの合図。将太とカラス姫は一緒にお山をかけまわって遊んだ。
あるときカラス姫は将太に歌を唄ってくれた。それはカラスみたいなしわがれ声じゃなかった。きれいな優しい声だった。
「カラス姫の声はしわがれ声だとばあちゃんが言っとたぞ」
カラス姫は真っ赤な顔でもじもじした。
「だって将太が聞くと言ったから一生懸命練習したんだ」
そんな赤い顔がかわいらしくて将太は不思議な気持ちになった。
将太はいつもナンテンやセンダンをたくさん持って帰るので、里の人はどこでとったのか知りたがった。将太はそれはカラス姫との秘密だと言った。
将太がカラス姫と遊んでいる?
でも村の人は誰も本気にしなかった。みんなカラス姫なんてばあさまのお伽話だと思っていたからだ。
ゴウゴウ風の吹く晩は、カラス姫が羽根を振るっている。
将太は布団の中で、あの子が夜の中を翼を広げて飛んでいる姿を思い描いた。
長い長い黒い髪。
大きな大きな黒い翼。
その髪と翼の中に、夜の風と星と月が一緒になっていた。
そしていつの間にか将太はその夜の中をカラス姫と一緒に飛んでいた。
カラス姫の白い顔が将太を見てにっこりする。
将太もカラス姫ににっこりした。
そして二人でずっとずっと夜の中を飛んでいるんだ。
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