3人が本棚に入れています
本棚に追加
もうじき春がやってくる頃、将太のともだちのよし坊が死んだ。風邪をこじらせてあっけなく死んだ。
よし坊のおっかさんは泣いて泣いて、そして将太のところにやってきた。
「カラス姫にあわせてちょうだい。よし坊の魂を戻してちょうだい」
よし坊のおっかさんは将太がカラス姫と遊んでいることを聞いてたのだ。将太はおっかさんがかわいそうだったので、お山に連れていくことにした。
「カアカア」
将太がいつもの合図でそう呼ぶと、カラス姫がやってきた。将太の側によし坊のおっかさんがいるのでびっくりしているようだった。
「カラス姫」
よし坊のおっかさんはカラス姫に飛びついた。
「よし坊を返して! よし坊を生き返らせて! お願いだ、お願いだ!」
カラス姫はおっかさんに抱きつかれてゆさぶられて叫ばれて、どうしていいかわからない顔をした。
そしてとうとう顔を覆って泣き出した。
「ごめんなさい、ごめんなさい。おらカラス姫でないの。炭焼きの五郎の娘の小夜なの。よし坊を生き返らせることはできないの!」
そう言ってカラス姫は―――小夜は将太を見た。
「カラス姫でないの。おら、ともだちがほしかったの。ごめんさない」
そう言って泣きながら山の中へ走って行った。
よし坊は生き返らなかった。
カラス姫はいなくなった。
将太はおっかさんの泣き声を聞きながら、いつまでもカラス姫の駆けていった先を見つめていた。
最初のコメントを投稿しよう!