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春が来た。
将太は山の中で「カアカア」と鳴いてみた。カラス姫はこなかった。
次の日も、次の日も、将太はカラス姫を呼んでみた。でもカラス姫はこなかった。
それから十日が過ぎた。
今日も将太は「カアカア」と呼んでいた。 そうしたら頭にコツンと何かが当たった。将太が上を見るとカラス姫が―――小夜が木の枝に座っていた。
ぶらぶらと赤い着物から白い足を出していた。長い布は羽織っていなかった。
「遊ばんのか」
将太は言った。小夜はうつむいて小さな声で答えた。
「おら、将太をだましたもん。カラス姫だって嘘ついて、ともだちになってもらったんだ」
「カラス姫は嘘だったけど、ともだちは嘘じゃないぞ」
将太は小夜に手を伸ばした。
「おりてこいよ、小夜。一緒に遊ぼう」
小夜の目からポロポロ涙がこぼれて落ちた。それから枝から飛び降りて、将太に抱きついてわんわん泣いた。
カラス姫はいなくなったけど、将太には小夜ってともだちができたんだ。
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