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お山の方でゴウゴウと風が吹いている時は、カラス姫がその大きな羽根をふっとるんじゃ。
カラス姫はな、その風で人の魂をもっていくんじゃ。
村で人が死んだら、カラス姫が冥土に連れていくんじゃ。
ばあさまはそう言った。
長い長い冬。
里は雪ですっぽりおおわれ、かやぶき屋根をぎいぎい鳴らす。
囲炉裏じゃ炭がぱちぱち燃えて、将太の顔を真っ赤にさせる。
将太はばあさまの横に転がって、カラス姫のお話を聞く。
カラス姫はまっくろで長い長い髪をたらして、まっくろで大きな羽根を広げとる。その羽根を隠すためにいつも長い布を体に巻きつけとるんじゃ。
カラス姫の顔はかわいらしい女の子でな、真っ白な肌にりんごのようなほっぺをして、花びらみたいな唇をしとる。
羽根を隠しているときは里の女の子のようじゃ。だどもその子に歌を唄わせるとな、カラスみたいなしわがれ声じゃからすぐわかるぞ。
そんでカラス姫はとても怖いんじゃ。きらきらしたものが大好きだから、お前の目ン玉をくりぬいて持っていくぞ。
ばあさまはそう言って将太をおどろかす。
「おら、カラス姫に会うたらすぐ逃げる」
将太はばあさまにそう言った。
「目玉も魂もとられやせん」
「そうかそうか、将太はええ子じゃな」
長い長い冬の間、将太は何度もカラス姫のお話を聞いた。
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