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人攫いのように志乃を肩に担いだまま川辺の岩肌へと歩みを進めた千景は、身の丈の腹部ほどの高さの場所に一部が平らになっている箇所を見つけると、音もなくその場所に飛び上がり、志乃は冷たく硬い地面に下ろされた。
志乃の体はぶるりと身を震わせる。
何より、恐れと緊張からくる体が強ばったまま視線を上げると、月を背にして一際赤い瞳だけが狂気を持って志乃を見下ろす視線と合わさった。
「今宵の趣向は痛みを伴ったものの方がいいようだな」
そう口にしながら腰のものを抜き、腰の帯を異常なほどにゆっくりと見せ付けるように解くと、志乃のいる場所のすぐ傍に放る。
次に身に纏う着流しと襦袢を剥ぎ取るように脱いで、逞しい肉体を月下に曝け出した。
均整のとれたみずみずしい生気を纏う肌に、志乃は再び熱が高まるのが分かった。
久方ぶりに目にした彼の肌が最期に抱かれた時の事を思い出させ、その時の戯れを呼び起こす。
無意識に嚥下する音がひどく大きく聞こえて、それに気付くと羞恥から視線を外した。
志乃の位置から見て中天を過ぎた場所にある月の光は千景の表の裸体を照らし、下肢にある陰毛の狭間より欲の象徴が恐ろしいほどに立ち上がっている。
「これが欲しかったのであろう」
僅かに体が動くたびに緩く左右に揺れる陰茎。
それを志乃の目の前にちらつかせ、愉快そうに喉で笑う。
そして、彼は低い声音で口にした。
「お前のその淫らな体で、俺をその気にさせてみろ」
と。
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