プロローグ

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 それが、王宮への旅に於いて、これほどまでに重要な存在になろうとは、思ってもみなかった。「まりん」という名の、不思議な女性。女性というより、まだ若い女子(おなご)と言ってもいいだろう。時によくわからないようなあっけらかんとした態度を取り、時に誰よりも熱い言葉を語ったりする。そして、本人も驚いているようだが、旅を続けるにつれ、魔術の力が増して来ている。  結果としてだが、彼女なしでは、ここまで来ることは出来なかったかもしれない。そこにレーソスは、何か運命のようなものを感じずにはいられなかった。若く血気盛んな剣士のエーディンや、同じく若いが思慮深く人を導く力もあるダクタという、「旅を共にする仲間」と出会えたことと同様に。いや、それ以上に、まりんとの出会いは「運命的である」と考えざるを得なかったのだ。  それはきっと、エーディンやダクタも同じ思いではないかと感じられた。最初は、自分の住んでいた町では見かけないような、「ちょっと変わった女の子」に思えただろう。しかし、同じ目的を持って旅をする「仲間」として、なくてはならない存在となった。彼女がいてくれたからこそ、ここまで来れた。そんな共通の思いが、3人にはあった。  それだけに。これから何があろうとも、彼女だけは守らねばならない。王宮の町へ行き、バロールの元へと向かう、この「旅」の終着点に至るまで。彼女を失うようなことだけは、あってはならない。例えわが身を、犠牲にしようとも。レーソスの心の中では、そんな決意が生まれつつあった。
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