クロ狐さん

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 お母さんがゲホゲホと咳をしながらパートに出掛けて行った。セイラもコホンコホンと咳が止まらない。身体がかったるくて起きるのがつらかった。なんだろう熱があんのかな。セイラはそう思って体温計を脇に挟むが微熱だった。学校、遅れて行こうかなと考える。もしかしたら熱が上がるかもしれないから少し寝て様子を見てから学校に行こう。高校は自宅から2駅電車に乗った先にある。  セイラはグレーの電車に乗って天気の悪い街並みを見ながら大きな駅に着く。ここは駅ビルも2つあるし、大きなバスロータリーがある埼玉県の小都市だ。セイラは改札を抜けて階段を下りる。  駅ビルの横を通りすぎ、正面から少し右に行ったところの階段を下りる。すると紫色のカラーコンタクトをしたロン毛のお兄さんがギターを横に置き駅の階段下に座っていた。黒い髪も先が紫色に染めてあって日本人に見えるがハーフと言われても納得するくらいカッコいい。座っている場所は一応屋根はあるが、床は石みたいなもので出来ていて2月のこの季節はとても冷たくて身体がしんどいだろう。普通こういった路上ミュージシャンは何か温かくなるよう工夫をしているが、この人は床の上に何も敷いていない。地べたに怠そうに座っているだけだ。視線は何ものも取らえていないように見える。ギターを聴かせたくてここにいる訳じゃないのだろうか。
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