恋の魔法が解けなくて

13/17
前へ
/109ページ
次へ
 それよりも問題は、とても愉しそうな笑顔を浮かべているこの転校生だ。 「あのワールでしょ? 何してんの?」 「ああ、ノートンというのは偽名だよ。君たちの世界は苗字も必要だからね」  最早否定すらしないのか。 「いや、そうじゃなくて……」 「この格好かい? 流石に高校生だからね、少し若そうな見た目に化けてみたよ。制服姿も似合っているとシャリーは絶賛してくれた」 「いや、そうでもなくて……」 「ああ、魔法使いだからね。戸籍くらい簡単に作れるさ」 「そこでもなくて……」 「ん? 隣の席の……成田君だったかな? 彼は少し運命を弄って隣のクラスだったという事にしたよ。大丈夫、彼の人生には何も影響がないようにしているさ」 「ええ……魔法ってすごい……。いや、そのことじゃなくてね」 「そうだ! マナが焼いてくれたクッキー、すごく美味しかったよ。ありがとう。シャリーも絶賛していてね、今度君の家に習いに行きたいそうだ」 「あ、うん。どういたしまして。じゃあ次の休みに……って、そうじゃなくて!」  このマイペースとズレっぷりが少し懐かしくも感じる。  私は一呼吸おいて一番知りたいことを質問する。
/109ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加