裏切者は…

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裏切者は…

篠原side 本来なら… 配電室でハッキング用の装置を取り付けた後 陽動の為に持参した時限式の発火装置も配電室の隅の方に取り付け… あとは命様からの合図と共に 俺達が車に戻る途中で発火装置が起動するようセットし―― その後俺達は車に戻る途中で配電室で起きるボヤ騒ぎに便乗して 各階のいたるところに発火装置を取り付けながら 洋一たちが無事に此処から出られるよう警備員達を陽動する予定だったのに… なのに… 「ッ邪魔だよ!退いてっ!!」 「ぐあぁあっ、」 「…なのになんで…っ、」 「ッ!お前達っ、止まれっ!!」 「ああもうっ!!」 少女漫画ヨロシク… 通路の角から突然飛び出してきた警備員に対し 俺は咄嗟に顔面にパンチを食らわせると―― 思わず今の憤り大声で叫んでいた 「なんでこんな事になってんだよぉぉぉおおおおっっ!!!」 「ぶごっ、、は…」 俺のパンチを食らった警備員はその場に倒れ… 俺はソレを確認する間もなく、階段をかけ上げっていく円の後を追う 「ッ…待てって円っ!」 「っダメだよ…ッ!お爺様が来てるかもしれないっていうのに…っ、」 「お爺様って……お前のお爺様がココにかっ?!それはおかしいだろう…  だってお前のお爺様とやらは確かサイトAに囚われているハズじゃあ――」 「ッそれは―――!  って…あ”あ”ーーーっ!なんで防火扉閉まってんのっ?!  コレじゃ上に上がれないじゃんっ!!」 2階へと続く階段を(のぼ)り終え… さらに上の階へと続く階段を駆け上がろうと俺達が角を曲がったところで 防火扉が閉まっているのが見えて―― 「もう…っ!こうなったら西側の階段まで行くよ!  こーちゃん着いて来て!」 「ちょ……だから待てってっ!」 今度は西階段目指して通路を駆け出した円に、俺は呆れ交じりの溜息をつくと 再び円の後を追って走る事に… その途中… 俺の視界に通路の両脇と真ん中に5人ほどが倒れているのが見え 前を走っていた円がゆっくりとその場に足を止めると―― 壁に寄りかかって倒れている覆面の男を見つめながら小さく呟いた… 「ッ…やっぱり…」 「…?なにがやっぱりになんだ…?」 「…この覆面男の装備……大神グローバルガードの…  って事はやっぱりお爺様が…?」 次第に青ざめながら狼狽えだした円の様子に 俺は戸惑いながらも周囲に視線を配り、辺りを警戒する… そんな中… 俺達の近くの扉が勢いよくバンッ!と開き―― 「ッ!?」 「なッ、」 「ッ……え?」 「、……?」 俺は咄嗟に扉の方に振り向きざま身構えるが―― スーツの男に肩を貸しながら部屋から飛び出してきた白衣の男が顔を上げた瞬間 俺は目を見開いて驚きの声を上げた 「ッ…親父っ?!」 「――浩介…?!何でお前が此処に…、」 「それはコッチのセリフだっつの……  何で親父がこんなトコに居んだよ…っ!  しかも白衣なんか着て……会社はどーしたんだよ!会社は!」 「ッそれは――その…、  そんな事よりもお前は一体此処で何してるんだっ!?  それにその恰好……、  ッ…いや…今はそれよりも一刻も早く此処から離れないと…、  浩介、お前も私と一緒に来なさい。此処は危ないから――」 そう言いながら親父が肩を貸している男を支え直すと 俺の方に向って歩いてくる… すると円が支えられている方の男の顔を見た途端 ギリッ…と苦虫を嚙み潰したような表情を見せ… 「ッ…お前…!」 「…!なんだ……大神の小倅(こせがれ)か…  ――という事はあの男はお前が連れて来たのか…?」 「……何の話し?」 意識が朦朧とするのか… 親父に支えられている男が若干視点の定まっていない瞳で円の方を見ると その口元に自嘲気味な笑みを浮かべながら言葉を続ける 「フッ……とぼけるな。  貴様が手引きしたのでないのであれば…  一体誰があの化け物を此処に連れて来たというのだ…  あの……若返った姿の大神御大を…」 「――ッ!見たのっ?!お爺様を…!  今何処に――」 円が親父に支えられている男に詰め寄り… その襟首をガッと掴んだその時―― バンッ!!! 「「「「ッ!?」」」」 ついさっき親父たちが飛び出してきた部屋のドアが勢いよく開き… 中から額のあたりを手で押さえた長身の男が少しフラつきながら姿を現すと―― 青ざめた親父が小さく「馬鹿な…」と呟きながら その場から数歩後ずさったのが見え… 「親父…?」 「…!おや……キミ達まだこんな所に居たのかい?」 「ッ大神様……どうして…!」 「フッ…あの程度の鎮静剤じゃあ――  今の私にとっては数分程度の足止めにしかならないよ…  それより――」 「…ッ、」 男の紅い眼球だけがキロ…っと動き、円の方を見ると 男はその口元に綺麗な弧を描きながら口を開いた 「まどか……お前も此処に来てたのか…」 「ッ……お爺様…!」 「…!コイツが…?」 ―――円の“お爺様”…? 俺は目の前のどう見ても“お爺様”には見えない青年の顔を凝視する     ―――前に“お爺様が洋一の匂いを元に創り出した薬で若返った”    ――という話は円から聞いて知ってはいたけど…    まさか本当だったとは… 話し半信半疑で聞いていた円の“若返ったお爺様”の姿を目の当たりにし… 俺は驚きながらふと視線を円に向けると 表情が完全に強張り… 委縮した様子で目の前の男を見つめる円の様子に 俺は思わず「大丈夫か?」と声をかけるが―― 円は声もなくその男を見つめるばかりで… 「…どうしたんだい?まどか……  久しぶりにお爺ちゃんに会えたっていうのにそんな顔をして…  嬉しくないのかい…?」 「ッ…そんな事は…、」 円が言葉に詰まりながらその顔色をどんどん悪くしていくなか 目の前の“お爺様”は目を細め…その笑みを深くしながら口を開く 「…そうかい?それよりもまどか……  この際だからお前に――聞いておきたかった事があるんだが……いいかな?」 「なっ…なに…?お爺様……聞きたい事って…」 「うん……サイトAでは“政府関係者の目”があって  お前が面会に来た時には聞くに聞けなかった事なんだが…  “20年前のあの事件”について是非、お前の答えが知りたくてね…」 「ッ……“20年前のあの事件”って…?」 明らかに動揺している様子の円の頬にお爺様が手を伸ばし… その頬をそっと撫でると―― その紅い瞳に怯える円の顔を映しながら言葉を続けた… 「フフッ……とぼけちゃって…可愛いね。まどかは…    まあいい…私が聞きたいのは――  20年前の私が暴走する数日前…  政府に私の研究内容を売ったのは――  おまえだったのかどうかって事だけだよ。    まどか…」
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