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しばらくの沈黙が訪れた。
やっぱり神様に願い事を一度に三つなんて、欲張りすぎてしまっただろうか。それも、神様を信じていなかった僕が。
――一つ目と二つ目は叶えてやろう。だが、三つ目は難しいな。…理由を聞かせてくれるか?
「あ、ありがとうございます。」
こんなに簡単に、願いを二つも叶えてくれるなんて、神様は意外と優しいのかもしれない。
「三つ目のお願いの理由は、単純にもう人の命を犠牲にして幸せを手に入れるようなことをして欲しくないからです。」
――ほう。
「なずなのような人をもう出したくないんです。父さんたちみたいに、それを有り難がる人も。」
僕が大好きだった人たち。
皆にはおかしいことをおかしいと思って欲しい。なんでも直ぐに受け入れずに、自分の意思を持って欲しい。
「それに、神様の助けに頼りっぱなしじゃ駄目だと思うんです。多少の困難なら乗り越えられる力を、人間は持っていると思いませんか?」
人は特別じゃない。でも決して弱くはない。僕はそう信じたかった。
――そうか。いいだろう、叶えてやる。
「……え?」
願い事って、そんな簡単に叶えていいものだっけ?この神様はさっき難しいと言ったことを忘れたのか。
――そのような願いごとなど、特段難しくもない。私はただ、願いの理由を知りたかっただけだ。
騙してすまんな、と神様は続けた。心做しか笑っている気がする。
――それに、あの決まり事も人間が勝手に決めたことだからな。
「…なるほど」
やっぱり神様は優しい。
神様と話していて、僕も少し神様を信じてみたくなった。
僕は神様を決めつけて、誤解していたのかもしれない。
「じゃあ、決まりですね。お願いしますよ、神様。」
――あぁ。では私と共に来い。たまき。
「はい、神様」
なずなや父さん、村の皆が幸せに生きられますように。
皆、さよなら。
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