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突然の話
「…え?」
「だから、なずなちゃんとは明後日でお別れなんだ」
なずなと別れて家に帰った後、夕食を作る父さんに唐突にそう伝えられた。
トントンと野菜を切る音が聞こえる。
「なんで、」
そんな話聞いてない。お別れなんて、そんな急に。
「…なずなちゃんが選ばれたんだよ。」
神様に、と父さんは続ける。
「神様…?」
「そう。ここでは、十八になった子供の中から儀式で一人選ばれるんだ。その子を神様に捧げて村の繁栄をお祈りする決まりがこの村にはある。」
知らない。そんな決まり事があるなんて知らなかった。
「そんなの、」
生け贄じゃないか、という言葉を僕は飲み込んだ。言葉にしたら本当に、なずなを生け贄にするみたいで。
「たまきも知らなかったよな。…この伝統は、十八歳にならないと教えられない決まりになってるんだ。」
いつもと変わらない父さんの声。僕は納得できなかった。
「…それ、辞められないの?」
村の繁栄の為になずなを犠牲にして、僕たちは幸せに暮らす?そんなこと、出来ない。出来るはずがない。
「なずなさ、先生になりたいんだって。東京の大学も受かったんだよ」
なずなの気持ちは、夢はどうなるの?
「そうか。…でもそうやって俺たちは、」
「…そんな伝統なんて、辞めちゃえばいいのに」
「おい、」
僕は父さんの声も聞かずに、自分の部屋に閉じこもった。
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