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彼女の夢
「私ね、学校の先生になりたいんだ」
幼なじみのなずなが少し照れながら言う。
「いいね、なずなならきっとなれるよ。なずなの教え方、分かりやすいし。」
なずなは昔から人に何かを教えることが上手かった。
年下の子どもたちや僕に、たまに勉強を教えてくれた。
「なずなせんせー」なんて子どもたちに呼ばれて嬉しそうに笑うなずなの顔が目に浮かぶ。
「お互い頑張ろうね」
なずなは先生になるための勉強をしに、ここを出る。僕は父さんと一緒に農業をするつもり。
なずなは努力家だし、僕と違って目標もちゃんとある。
なずなはいつも僕より何歩も先を歩いてた。そんななずなに僕はいつも引っ張ってもらっていた。
今の僕にはなずなみたいな明確な目標はないけど、僕もいつか夢や目標を持てるといいな…なんて。
なずなと僕が住んでいるのは、山奥の小さな村。皆顔見知りだと断言できるほどここに住む人は少ない。
皆が見知った人だからか、小さないざこざはあっても大きな事件は起きたことがないし、いつも平和だ。それに、こんな山奥なのに不思議と不自由だと思ったことも無い。
僕はこの村が好き。
村の人が暖かくて、景色も綺麗なこの村が。
だから、僕はこれからもここで、生きていくつもり。なずなは先生の資格をとったら、ここに戻ってくるつもりだと言っていたから、なずなとは、それまで少しお別れだ。
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