信じるより信じたい

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 了解したと応えるように龍が一瞬光を点滅させ、容赦なく実行に移す。  猛スピードで顔からケイロへ迫り、鼻頭で空へと押し上げていく。  すごい風圧……乗っているだけの俺でも息が苦しい。  神社がどんどん遠ざかって、空の上まで昇って――龍はケイロを跳ね上げ、落ちかけたところをまた鼻頭で突き上げ、執拗に攻め続ける。 「落とすなよ! お前らが今まで憂いてきた思い、全部ぶつけてやれ!」  俺の煽りに龍が嬉々として応え、防戦一方のケイロを延々といたぶる。  次第にそれは顔ではなく、胴体で跳ね上げるようになり、それから尻尾で……と勢いを落としていく。ケイロに疲れは見えたが、防御に徹したおかげかひどいケガは見られなかった。  密かにホッと息をついていると、手中の輝石が俺に話しかけてきた。 『……太智はあの王子に怒りを覚えていないのか?』 「怒り? ……あー、ちょっとだけ怒ってる。事情あれこれ言わなさ過ぎでムカつく……でも、俺もケイロに言わないで勝手に動いてたし、お互い様だ」 『わざと王子のみに標的を絞り、精霊たちの昂りをぶつけさせて、我を取り戻させていく……仕返しではなく、あの場を治めるための手段だったのだな』 「お互いに事情を話せば済む話なんだよ、ホント……でも頭に血が上ったヤツらにそれは無理だから、気が済むまでやらせた。落ち着いたケイロなら、冷静に話を聞いて手を打ってくれる」  そろそろ精霊たちを止めても大丈夫だろうと思っていると、輝石がポツリと呟いた。 『随分とあの王子を信じておるのだな』 「信じるっていうより、信じたいってところだな……夫婦だから、俺たち」
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