間近で観察も乙なもの

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間近で観察も乙なもの

「太智ー、ご飯食べるぞー」  昼休み時間になり、クラスメートで幼馴染の友人でもある悠が俺の所へやって来る。  俺よりやや小柄な真面目を絵に描いたようなヤツ。寝癖が付きやすい俺には羨ましい、ワシャワシャ撫ででも形が崩れない悠の形状記憶頭髪が今日も艶を放っている。  俺の前の席を借りて机をくっつけると、いつもにこやかで優しい性格の悠は、隣の常時不愛想人間の圭次郎を無視せずに声をかけた。 「百谷君も一緒にどう?」  実は転向初日から悠は声をかけ続けている。でも圭次郎からの答えは毎度同じで、 「……遠慮する」  と露骨に嫌そうな顔をして席を立ち、教室から出て行ってしまうのがパターン化していた。今までは、めげない悠がすごいなと感心しつつ、放っておけばいいのに……と俺は何も言わずにいた。  でも間近で圭次郎ウォッチングをしたくて、俺は口を開いた。 「そう言わずに……まさかひとりで便所飯するのが好みか?」 「は? そんな訳がない――」 「じゃあ兄ちゃん先生のどっちかと一緒に食べないとイヤってことか? 実は案外とお兄ちゃん大好きっ子……?」 「あ、あり得ない! 分かった……っ、そこまで言うなら一緒に食べてやろう。光栄に思え!」  まともに口を聞いたのはこれが初めてだったが、もう王子様キャラが体の芯まで染みついているようで、普段の言動も明らかに偉そうだ。根っからの王子だ……期待を裏切らないヤツ。  ガンッ! 自分の机を俺たちの机に強くぶつけながらひっつけると、圭次郎は不本意そうに通学カバンから弁当を取り出す。  ――イチゴ柄の袋……カワイイな。うおっ、弁当本体もカワイイでやんの。しかもちっこい。え、中身は……ああっ、これ幼児に大人気のこしあんまんマンのキャラ弁?! ギャップすげぇ……! しかも圭次郎、恥ずかしがる気配一切なし。堂々と、これが王族の食事ですと信じて疑わないような態度。
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