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アウトブレイク。
「ほらほら見てー!さすがあたし。めっちゃバズってるっしょ?」
姫華はそう言ってケラケラと笑った。いつものことだ。彼女は自分のツニッターのフォロワー数をみんなに自慢して回り、少しでも人気が出るとこうして教室で言いふらして回っているのだから。
このSNS中毒者め、とやや引いた目で見ている者も少なくない。
ただ彼女のような手合いを下手に敵に回すと、根も葉もない発言を捏造してネットに晒される、なんてことになりかねないので大人しく愛想笑いを浮かべているだけである。実際、それは私も同じ。私達同じクラスの女子にもややドン引かれている有様だというのに、本人だけが気づいていないのが少々滑稽で不憫ではある。
フォロワー数が万単位、というのは確かに凄いと思う。私もツニッターはやっているが、フォロワー数は数十人が精々の身内アカウントと化している。どうやったらそんなに増えるんだと思わないでもない。が。
興味を持つべき領域、持たない方が無難な領域というのは実際あるのだ。彼女のその万単位のフォロワーや頻繁に“バズる”原因の半分は、彼女が炎上しかねない危ない写真や動画をバカバカと撮影してネットにアップするからなのだから。
今回見せびらかしているのもそういった類である。昨日、あの大手遊園地に友達と一緒に遊びに行った、というのは既に聞いていた。なお昨日は普通に平日。彼女は学校をサボって遊園地に遊びに行ったのだ。平日だから休日より遥かに空いていて快適だから、という理由で。それを堂々と年柄年中繰り返すのもどうかと思うが、先生の耳に入るのもお構いなしにサボりを言って回るのもどういう神経をしているのやら。
普通の生徒だって、一回や二回学校をサボることくらいはあるのかもしれないけれど。それでも大抵は罪悪感から、休んだ理由を誤魔化すくらいはするというものなのに。
「美衣ー!見てよこれ、こうして話してる間にもどんどんいいね増えるー!」
昼休みが今日は妙に長いと思ってしまう。みんなに一週して自慢したところで、彼女は私のところまで戻ってきてしまった。どうにも、彼女の中で私はかなりランクの高い友達という位置づけになってしまっているらしい。サボり遊園地は上手に断ってきているが(成績があまり良くないので、ある意味断る理由として説得力はあるのだ。悲しい現実だが)、こうして昼休みを楽しくないお喋りで潰されることはままあるのが辛い。
SNS中毒とそれに関わる問題行動さえなければ、明るくて元気な普通の女の子なのに――と何度思ったことだろう。しかし、そんなに学校をサボっていて大丈夫なのだろうか。中学と違って、高校には“留年”という恐ろしいトラップも存在しているというのに。
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