神様なんかじゃない

1/14
前へ
/15ページ
次へ
完全に昼夜逆転。 バンドマン=夜行性。 もれなく俺もそのひとり。 コンビニが大好きな俺は、今日もあの明かりを求めて夜の町に出る。 昼間は賑わっていた町の姿は気配を消し、寂しささえ漂う夜の町の中に存在する明るすぎるコンビニは、俺の心を潤すオアシスだ。 俺は誰とでも喋れて、すぐに仲良くなれることが特技みたいなもので、いつも誰かが周りにいて、寂しさなんて微塵も感じたことがなかった。 そんな俺が暖かい環境から離れ、地元を離れることを決めたのは、高校時代からやっていたバンドが、メンバーの進学や就職で解散することになったから。 プロを目指して活動して来たつもりだったけど、他のメンバーはそれぞれの道を見つけた。 まだ若くて、将来についてなんて考えていなかったから、解散は仕方ないことだった。 でも、俺は夢を諦められなかった。 もともと目立つことが好きで、モテたいとかそういうことより、とにかく音楽がなによりも好きでバンドを始めた。 この赤い髪も、始めは単純に目立ちたかったから。 友達に似合うと言われたことが嬉しくて、今はこだわりの赤髪がトレードマークだ。 俺の母はボイストレーナーで、父がスタジオミュージシャンだから、子供の頃からいろんな楽器に触れて育った。 ありとあらゆる楽器が家に転がっていたから、ギターもベースもピアノもドラムも、遊びの延長で全部出来るようになった。 その中で俺が選んだのはドラム。 なんでドラムかって? それは、単純に派手で格好いいから。 昔から派手なものへの憧れが強い。 なんでかはわからないけど… とにかく叩いていて楽しい。 バンドを解散してからは作曲をしたり、一人で演奏してみた動画を撮って、動画サイトにアップしたりして、音楽活動を地道に続けた。 それが結構な再生回数で人気にもなって自信がついた。 音楽で食って行くとか、普通は反対されるけど、俺の親も音楽で生活していることもあり、音楽の道に進むことを反対されることはなかった。 むしろ、俺の才能を親を始め、先生や友達も認めてくれて、みんな応援してくれている。 そんな風に恵まれた環境で育って来たからこそ、地元を離れるのはやはり不安で寂しい。 簡単に帰ることの出来ない距離だからこそ、頑張ろうと思えるのかも知れないけど、無性に人恋しくなることがある。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

46人が本棚に入れています
本棚に追加